THE FEELING IS THE STORY — 001
なんでもなかった日が、
ずっと残ってる。
帰り際に初めて名前で呼ばれたこと。
夏祭りのあと、捨てられなかった紙の輪。
もう会っていない人の、好きだった曲。
恋の記憶は、だいたいこんなところにある。
01 / COLLECTION OF FEELINGS
どんな気持ちが、
残ってる?
「何があったか」は忘れているのに、「どんな気持ちだったか」は覚えている。そんな探し方ができるようにしました。
12 個の瞬間
帰る時間になってから、話したいことが増える。
電車が来るたび、ふたりとも半歩だけ動く。
この瞬間を読むデートの最後に寄ったコンビニだけ、やけに覚えてる。
完璧な店より、レジの前で迷った二人。
この瞬間を読むさよならを言う前の、やたら長い横断歩道。
信号が赤になった。少し得をしたような、悲しいような。
この瞬間を読む帰ったあとにも、同じことを思い出していた。
「今日ありがとう」の後ろに、二人しか知らない話がついた。
この瞬間を読む好きな曲が、一曲だけ増えた帰り道。
曲の途中で話すのをやめた。嫌な沈黙じゃなかった。
この瞬間を読む初めて下の名前で呼ばれた日、返事が遅れた。
ちゃんと聞こえていた。聞こえなかったふりをした。
この瞬間を読む雨がやむまでの、予定になかった十五分。
傘は一本もなかった。近くの自販機には温かい缶が二本。
この瞬間を読む花火が終わった途端、普通の道に戻った。
大きな音が消えると、さっきまで聞こえなかった靴音がする。
この瞬間を読む覚えていてくれたのは、好きなものじゃなくて苦手なもの。
「氷、なしでいいんだよね」だけで、少し言葉に詰まった。
この瞬間を読むもう会っていない人の曲が、突然流れた。
一駅ぶんだけ、昔の車内に戻った。
この瞬間を読む捨てられないのは、物じゃなくて買ったときの会話。
百円くらいのキーホルダーに、二人ぶんの記憶がついている。
この瞬間を読む半年ぶりなのに、最初に出たのは「髪切った?」。
聞きたいことはもっとあったのに。
この瞬間を読む掲載している場面と会話はすべて創作です。実在の人物や既存作品のエピソードではありません。
02 / THINGS THAT BRING IT BACK
思い出すのは、
だいたい不意打ち。
一曲、ひとつの交差点、何となく開けた引き出し。記憶を呼び戻すきっかけから、エモい瞬間をたどる。
「好きだった」より先に、
思い出すものがある。
写真には写っていない、やけにどうでもいい細部。相手が選んだアイスとか、雨がやむのを待った店の軒先とか。そこに後から名前をつけたくなる。その瞬間を一つずつ、集めていく。
たとえば、コンビニに寄った夜03 / THE EVERYDAY SIDE OF ROMANCE
そんな時間を、
大切にするために。
エモい瞬間を作ろうと頑張りすぎなくてもいい。でも、言葉を選ぶときに役に立つことはある。ここは実用記事の棚。