FEELING ARCHIVE / ときめく
17:05 / 駅の東口 · 春半年ぶりなのに、最初に出たのは「髪切った?」。
聞きたいことはもっとあったのに。
半年ぶりの約束。会うまでに話したいことをいくつも考えていた。改札から出てきた相手を見つける。前より少し髪が短い。それしか言えなくなる。駅前は工事中で、以前と違う出口から二人で歩き始める。
駅の東口は工事をしていて、前に会ったときと通路が違っていた。待ち合わせの場所をメッセージで送ったあと、改札から人が出てくるたび顔を上げる。半年は長いようで、見つけるのには一秒もかからなかった。人混みの中で手を振った相手の髪が、記憶の中より少しだけ短い。
A SMALL SCENE / 創作会話
あなた……髪切った?
相手切った。けっこう前だけど。
あなた似合ってる。
相手ありがとう。行こっか。
創作した会話です。実際の誰かの発言や作品の引用ではありません。用意していた話題は、歩き出したころにはどうでもよくなった。
WHAT WAS DIFFERENT
あのとき、何が残ったんだろう。
前の日に考えていた話題は、新しい仕事のこと、最近行った店、半年ぶんの面白い話。ちゃんと聞けるように頭の中で順番をつけていた。相手が近づくと、それが全部どこかへ飛んでいく。最初に口に出たのは髪の話だった。それが嫌味に聞こえなかったか不安になったけれど、相手は普通に笑って『けっこう前だけど』と言った。
前と同じように話せるか、少し変わっているのか。半年の間にそれぞれ別の生活があった。昔の呼び方でいいのかさえ最初は迷う。会えなかった時間を埋めようとして全部質問するより、今日の相手と新しく話し始めればいい。そう思いながら歩いていると、昔から知っている曲が店先から流れてきた。
WHY THIS STAYS
忘れられないのは、
こういうところ。
離れていた時間は急に埋まらない。それでも、目の前にいる人の変化を一つ見つけると、話が始められる。覚えていた姿と、今日の姿が重なる瞬間。
夜になって、会ったときの会話を思い出す。髪の話だけで、あんなに緊張していた。
帰って写真を整理していたら、半年前の自撮りが出てきた。髪は確かに今より長い。よく覚えていたつもりの顔も、写真で見ると少し違っている。変わったのは髪だけではないのかもしれない。でも、会った瞬間に声が出なくなった自分は、半年前からあまり変わっていなかったらしい。
IN YOUR OWN STORY
もし、似た日が来たら。
久しぶりに会う相手には、準備した台詞より今見えたことを自然に話していい。外見への言及が苦手な相手には無理に言わない。
過去の親しさを理由に、現在の距離感や関係を決めつけない。
帰り道に送ったのは、結局「今日楽しかった」だった。
架空の場面。特定の実話・SNS投稿・映像作品を基にしていない。
イメージ写真: Mikhail Benitez / Unsplash。写真は創作された出来事そのものを撮影したものではありません。
気持ちから探し直す